筋力低下が膝の関節が変形する原因の一つです
膝の軟骨がすり減って関節が変形してしまう、「変形性膝関節症」の原因の一つは、下肢の筋力低下です。とりわけ大腿四頭筋の筋力低下と関連があると言われています。
当院では変形性膝関節症の患者さんに対して大腿四頭筋の筋力を定期的に測定し、治療効果がわかるよにしています。
筋トレなくして膝の痛みが良くなることはありません
と言ってしまえるほど世の中単純ではありませんが、肥満体型で膝が痛い場合はこの通りだと思ってください。関節に注射を何回かしたり、運動器リハビリで固くなっている筋肉をほぐしたりしたら痛みは軽減することはありますが、結局のところ筋力が弱くてはまたすぐに痛くなってしまいます。痛みが出るたびに変形は進んでいきます。
「ヒアルロン酸の注射をしましょう」「痛み止め(の内服)を使いましょう」と、言われたことがあるかもしれませんが、確かに一時的には痛みは楽になるかもしれませんが、結局のところ日頃のトレーニング不足が原因で痛くなっているわけですから、あくまでも注射や内服は補助的なものになります。
当院で行っている多血小板血漿療法も同様で、確かに半年から1年は関節水腫を抑える働きがありその間は痛みが軽減しますが、効果があるうちに(=トレーニングが行いやすい環境の時に)ちゃんと筋力をつけていかないとまた悪化してしまいます。
スクワットは筋力が十分にない状態ではやってはいけません
変形性関節症は筋力が十分にない状態で、膝に体重がかかることによって進行します。
スクワットや階段昇降はまさにこの状態です。十分な筋力がない状態でスクワットを行うことは逆効果です。
今回の動画には3種類のトレーニング方法を紹介しています。いずれも膝の軟骨に負担をかけないで済むトレーニング方法です。
正直この3種類のトレーニングをちゃんと行っていただければ、スクワットをしなくても日常生活レベルでしたら十分に痛みのない生活を送ることができます。
どのトレーニングを行うのかは、療法士と相談して決めてください。
3つのトレーニング方法解説
セッティング
3種類のトレーニング方法の中で一番基本的なトレーニングです。体重をかけなくても曲げると膝が痛い場合はまずこのトレーニングを行うことになります。
最初はタオルを膝の下に敷きますが、慣れてくればタオルがなくてもトレーニングできるようになりまう。動画では座った状態でのトレーニングを解説していますが、立った状態でも同じように筋肉に力を入れれるようになるといつでも筋力トレーニングできるようになります。
3つのトレーニングのなかでは最も負荷が少ないので安全に行えますが、筋力はつきにくいです。
ストレートレッグライジング
あまりカタカナは使いたくないのですが、適当な日本語訳がないのでこのまま使います。直訳すると「(膝を)まっすぐしたまま脚をあげる」トレーニングです。
ご自身の脚の重さが負荷になるため、セッテイングよりも大きな負荷をかけることができます。足首におもしをつけて行うこともできます。セッティングと同じように、膝を曲げてしまうと痛みが出る場合は有効なトレーニングです。
レッグエクステンション
「脚を(膝関節を)伸ばす」トレーニングです。上二つと違い、膝を曲げ伸ばしするので大腿四頭筋の色々な部位の筋肉を鍛えることができます。足首におもしをつけて負荷をつけることもできます。
座っていればいつでもできますので、「お友達とお茶話をしながら」「テレビを見ながら」でもすることができます。「練習する時間がない」なんていいわけはできません。
しっかり膝を伸ばしましょう
いずれのトレーニングも、ポイントの一つは「しっかり膝を伸ばすこと」です。膝関節が真っ直ぐに伸びないと(屈曲拘縮といいます)、膝の軟骨がすり減りやすくなったり、腰痛の原因になったりします。筋力を鍛えると同時に膝をしっかりとストレッチしていきましょう。
1日に何回やったら良いのですか?
「朝晩30回ずつやっています」と言われたりしますが、そのくらいのトレーニングでよくなるほど簡単なものではありません。「暇さえあればひたすらやってください。筋肉痛になるぐらいでちょうどいいぐらいです」といつも説明しています。
筋力低下が原因でなった変形性膝関節症は、患者さんの生活そのものが膝に対して悪影響を与えてきたことが原因です。食生活や正座などの生活習慣、膝回りの筋力を使わない生活などが原因ですから、今まで通りの生活にちょっとプラスして運動した程度でよくなるはずはありません。日常生活にいかに膝を守る筋力をつける習慣を溶け込ませるかがポイントになります。