トラムセット(トアラセット)とトラマドール

トラムセットとトラマドール_830×510

オピオイド系鎮痛薬の代表

トラムセット(後発品名トアラセット)やトラマドールは「トラマドール塩酸塩」を含むお薬です。
トラマドールは麻薬の一種であるオピオイドと呼ばれる物質の一種です。
主に痛み止めとして使われます。
麻薬と聞くと恐ろしい感じがするかもしれませんが、鎮痛効果が高くて依存症が比較的低いのが特徴で、オピオイドの中では比較的安全に使うことができます(後で書きますが、全く依存症がないわけではありません)。
最初にトラマドールが発売されたので、このコラムではトラマドールから説明していきます。

元々は癌性疼痛に対する鎮痛薬

トラマドールは麻薬の一種ということで、当初は癌による痛みや手術後の痛みに対する適応しかありませんでした。
どのお薬でもそうですが「有効性が副作用よりも明らかに高い」と判断された場合にのみ適応されます。当初はトラマドールの副作用がどの程度かわからなかったので(臨床試験が十分におこなわれていなかったので)、厚生労働省は適応拡大に慎重でした。
トラマドールの適応が狭かった理由として、お薬を飲んでから効果が出るまでの時間が長いという欠点があったことも影響しています。「腰が痛くて眠れないのに、飲んで寝てもなかなか効かず、朝方になってから痛みが取れてきた」ではお薬として使いにくいわけです(実際は内服して効果が出るまで2時間ぐらいです)。

トラムセット=トラマドール+アセトアミノフェン

「効果が出るまでが遅い」という欠点を補う目的で、アセトアミノフェン(カロナール)との合剤にしたのがトラムセットです。名前の由来はトラマドール(Tramadol)とアセトアミノフェンがセット(set)になっているお薬だそうです。
アセトアミノフェンは安全性も高く、効果発動も比較的早い(30分程度)お薬ですが、痛みを抑える効果は弱いです。したがってこの2種類を合わせることによって「飲んですぐ効いて、痛みを抑える効果が高い」お薬を目指したわけです。
また、癌以外の原因による痛みに対しても効果があり、安全性も比較的高いことが示されたため、適応が「非癌性慢性疼痛」、つまり変形性関節症や腰痛症などに広がることになりました(現在はトラマドールも癌以外の慢性疼痛に対する適応があります)。

ツートラムとワントラム

トラマドールのもう一つの欠点として、効果が切れるのも早いという欠点もありました。これに対して薬の形を工夫して、長い間効果が持続するように作られたのがワントラム、ツートラムです。
名前の通り、ワントラムが1日1回、ツートラムが1日2回の内服ですむように作られています。急激に痛みがひどくなった場合の内服方法もあります。

副作用

短期的な副作用と長期的な副作用があります。

短期的副作用

吐き気

最も多い副作用です。吐き気を抑えるために吐き気止めを処方することが多いですが、全く吐き気がない方もいらっしゃるので、そのような方は2回目に処方する時に吐き気どめはいらないとお伝えください。
吐き気止めの薬も、飲んですぐ効果がでるわけではないのでトラムセット(トラマドール)内服よりも30分程度早くのむのがコツです。外来では「食事前に吐き気どめを飲んで、食事後にトラムセット(トラマドール)をのんでね」とお願いしています。
継続して飲んでいくと吐き気はおさまってくることが多いので、途中で吐き気どめが入らなくなる場合も多いです。

めまい・気分不良

内服量が多くなると出てくる印象があります。減量したり、他の内服薬に変更することで対処します。

長期的副作用

疾患の増悪

どの痛み止めについても言えることですが、時間とともに治る病気でしたら問題はないのですが、変形性関節症などは根本的な治療を行わない限りは内服のみでは症状は悪化してしまいます。「痛み」とは「今状態が悪いので痛みが出る動きはしないでほしい」と体が教えてくれているわけですから、痛み止めをの飲んで痛みがでる動きをすることは何もメリットはありません。「家が火事になって火災報知器が鳴っている時に、火災報知器だけ止めて火を消さないようなもの」です。

依存症・耐性

少ないとはいえ、依存症や耐性があります。
依存症は「飲まないと痛みが止まらない。飲んでいないと痛くてたまらない」という訴えが多いです。
耐性がある場合は「処方された倍の量を飲んでみたが痛みが全く改善しない。ちょっとでも動いたら痛くて激痛が走る」です。
痛みをコントロールする基本は「痛みの出る動きをしない」ですが、トラマドール依存症になってしまった患者さんはこの基本がご理解いただけない場合は多いです。
残念ながらこのようになってしまってはトラムセットで治ることはないと思います。少なくとも当院のような小さな整形外科でできる範囲を超えていますので、ペインクリニックや大きな病院を紹介するようにしています。

まとめ

  • トラムセットやトラマールはオピオイド系鎮痛薬で麻薬の一種
  • 痛みを止める効果は高い
  • トラムセットはトラマドールの効き始めが遅い欠点を克服してより安全に使えるように作られた合剤
  • ワントラム、ツートラムはトラマドールの持続時間を長くしたお薬。
  • トラムセットから癌以外の慢性疼痛に対する適応が広がった
  • 吐き気がでやすいので、吐き気どめの使い方がポイント
  • 依存症や耐性が全くないわけではないので「飲まないとやってられない」状態になったらやめましょう
  • 痛みを抑える効果は高いので副作用に注意しながら使えばすごく良い痛み止めです
うさぎ平

関連記事

  1. 変形性膝関節症830×510

    変形性膝関節症の原因と治療

  2. 大腿四頭筋トレーニング830×510

    変形性膝関節症に対するトレーニング(動画)

  3. マスク着用 830×510

    当院はマスク着用を続けます

  4. 腰椎椎間板ヘルニア 830×510

    腰椎椎間板ヘルニア

  5. 有痛性外脛骨_830×510

    有痛性外脛骨(外脛骨傷害)

  6. 錠剤

    痛み止めについて

PAGE TOP