肋骨骨折

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食べ物をエネルギーに変えて消費するためには酸素が必要ですが、空気中の酸素を取り込むための大事な臓器が肺です。空気中に含まれる酸素の密度はとても低いので、酸素を体に取り込むためには大きな面積が必要です。
肺の表面積は広げるとテニスコート1面分ほどあります。また、肺の表面に常に新しい空気が当たっていないといけませんので、柔軟性でないといけません。そのため肺はスポンジのような構造をしています。外から力が加わると簡単につぶれてしまいます。
肋骨の役割は主に肺を外力から守ることです。転倒した場合や、何かがぶつかってきたときに肺にダメージが行かないように守っています。さらに左右二つの肺の間には心臓があって、肋骨は肺とともに心臓を守る構造になっています。

肋骨が骨折する原因は主に3つです

  • 外傷
  • 疲労骨折
  • 病的骨折

肋骨が折れる原因で一番多いのは転倒によって強く胸を打ったときです。直接地面に胸があたって折れる場合もありますし、上肢(腕)が胸と地面の間に挟まって、上肢が肋骨を押して折れることもあります。

繰り返し咳をしていると折れることがあります。咳をする時は息を吐くときに使う筋肉が一度に働いて肺をすぼめますが、繰り返し咳をしていると肋骨の特定の部位に曲げる力が加わっていき、骨折をするとこがあります。

肋骨は悪性腫瘍の転位の好発部位です。
悪性腫瘍の中には大きくなる際に周りの骨を溶かしていく種類があります。そのような腫瘍が肋骨に転位したときは、軽い力で折れてしまうことがあります。

「息をするときにずきんと痛みが出る」「肋骨を1本1本押さえてみて、痛みがある肋骨とない肋骨がはっきりしている」「帯状疱疹などの皮膚症状がない」などの所見があれば肋骨骨折を強く疑います。
画像検査としては単純撮影(レントゲン検査)、超音波検査、CT検査などがあります。
単純撮影で肋骨骨折が判明するのは4割程度と言われています。残りの6割は他の検査をすれば見つかる(かもしれない)肋骨骨折です。しかしながら
CT検査:被曝量が多い
超音波検査:検査に時間がかかるわりには検出率は高くない
のが現状であり、それらの検査をしても治療方針に大きな違いはでないため、無理に肋骨骨折を見つける必要はありません。

前述のように肋骨は「肺や心臓などを守るための鎧」ですので、肺損傷の有無に最も注意を払って診察します。

長くて2ヶ月ほど痛みが続きます。最初の1ヶ月ほどは生活に支障が出るくらい痛いこともあります。
鎮痛薬や湿布を使うなどして痛みをコントロールするしか対処方法がないというのが実情です。バストバンドという胸に巻く固定具を使うと呼吸する時の肋骨の動きが抑えられるため痛みが軽減します。
4本以上一度に折れていると肺を傷つける可能性がありますが、それ以下の数の肋骨骨折やレントゲンでわからない程度の肋骨骨折の場合は肺を傷つける可能性はほとんどないと言われています。
当院では受傷後1週間後に念の為胸のレントゲン撮影を行うこともあります。
痛みがある時によほどの無理をしない限り、何か後遺症を残すようなことはほとんどありません。

肋骨骨折は、外傷や衝撃によって発生しますが、合併症に注意すれば特に大きな問題になることはありません。注射や手術などで劇的に症状を改善するとは難しく、骨折部位が回復するまで鎮痛薬などで痛みを抑えていくしかありません。
「肋骨骨折かもしれない」と思われて患者さんは受診をされるわけですが、内臓に問題がなければ「肋骨骨折があるかどうかはわからないことが多いし、骨折していても、していなくても治療方針に大きな差はない」ので、患者さんからしたら期待した診断結果が得られないだけでなく、あまり効果的な治療法も得られないためにがっかりして帰られることが多い外傷です。

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