アセトアミノフェン(カロナール)とロキソプロフェン(ロキソニン)

アセトアミノフェン・ロキソプロフェン_830×510

整形外科に来院されるかたは「痛みをなんとかしてほしい」との思いで来院されると思います。痛みを改善する方法の一つが鎮痛薬を使う方法です。鎮痛薬にはいろいろな種類がありますが、とりあえず副作用が比較的少なく、市販もされており手に入りやすいのはこのアセトアミノフェンとロキソプロフェンではないでしょうか?

歴史はかなり古く、医薬品として使用され始めたのは1890年代ですが、実はアセトアミノフェンの作用機序はよくわかっていません。
中枢神経系(脳など)に作用して、痛みの信号が局所(痛いところ)から脳に伝わってくるのを抑える働きがあるのではないかと言われています(下降抑制系の賦活といいます)。
いずれにしても痛みの原因を改善するものではないので、服用したら早く治るものでもありません。むしろ痛みを抑えることによって局所の安静が取れなくなった場合は治療期間が伸びてしまったり、逆に悪化させる可能性があることはどの痛み止めでも共通の問題点です。

ロキソプロフェンはNSAIDs(エヌセイドと読みます)と言われる薬の仲間です。NSAIDsはシクロオキシゲナーゼと言われる酵素の働きを抑えます。この酵素はいろいろな働きがありますが、その中に炎症を促進させる作用があります。したがってロキソプロフェンは炎症を促進させる酵素の働きを抑えることにより痛みを抑えています。
アセトアミノフェンが痛みの信号が脳に伝わるのを抑えているのに対し、ロキソプロフェンは痛みの元を小さくすることにより痛みの刺激を減らしていることになります。
炎症は確かに痛みの元になりますが、同時に傷んだ組織を修復するために必要な体の正常な反応です。
したがってロキソプロフェンを使うことにより傷ついた組織の修復が遅れたり、返って悪化させる可能性がでてきてしまうのはアセトアミノフェンと同じです。

ロキソプロフェンと比較して痛みを抑える効果は弱いと言われています。しかしながら最近は大量に服用することで痛みを抑える方法も考案されて、使い方も見直されてきました。
成人では鎮痛目的では1日4000mgまで使用しても良いとなっています。一番大きな錠剤で500mgですから1日に8錠まで内服できます。「2錠飲んでも思ったほど痛みがおさまらなかったので追加で1錠内服する」という使い方もできます(無制限というわけではなく1日で4000mgを超えないように内服してください)。

アセトアミノフェンよりも鎮痛効果は高いと言われています。ただし、腰椎椎間板ヘルニアなど神経が直接締め付けられて生じる痛み(神経障害性疼痛)に対しては効果が弱いと言われています。

アセトアミノフェンの一番の特徴が副作用の頻度が少なく安心して使える点です。100年以上使われてきているため、妊婦や小児でも安全性が確認されており安心して使うことができます。
NSAIDsでは注意が必要な腎機能の悪い人、アスピリン喘息がある人、出血傾向のある人(血をサラサラにするお薬を内服している人)などにも安全に使うことができます。
肝機能が悪くなることがあり、1日1500mg以上を長期間続けている人は定期的な肝機能検査を受けることが勧められています。いくら他の痛み止めと比較して安全だからといっても長期間だらだらと内服するのは避けたほうがよいです。
アセトアミノフェンの使われ方の特徴として他のお薬との合剤で使われる場合があります。特に市販の解熱鎮痛薬で含まれていることが多く、「知らない間に大量服用していた。許容量を超えていた。」とならないように注意してください。

胃腸障害(胃潰瘍、消化管出血)、腎障害(尿量減少等)、凝固異常(血が止まりにくくなる)、NSAIDs過敏症(以前はアスピリン喘息と言われていました)など、多岐にわたります。
鎮痛効果が高くいわゆる「キレのある」お薬ですが、このように様々な副作用があるためアメリカなどでは最近使われなくなってきているそうです。
NSAIDsによる胃潰瘍に対する治療や予防方法としては、以前は胃粘膜保護剤(ムコスタ等)を用いていましたが現在では予防効果がないことがわかってきており、プロトンポンプ阻害剤(タケプロン等)、プロスタグランジン製剤、H2ブロッカー(ファモチジン、ガスター)などが用いられます。

どちらも一般的には錠剤を経口で服用します。アセトアミノフェンは小児にも適応がありますので飲みやすいように甘く味をつけた粉薬もあります(ドライシロップ)。
どちらも6〜8時間効果があります。ですので「8時間おきに内服する」のが効果的な使い方ですが、一般的に医療機関から処方される時は飲み忘れないためにも「1日3回毎食後」となっていることが多いです(し、当院でも毎食後で処方しています)。
ロキソプロフェンもアセトアミノフェンも治療効果はありませんので、痛みが十分にコントロール可能であれば無理して内服しなくてもかまいません。

アセトアミノフェンには坐薬(おしりから入れるお薬)もあります。乳児など内服が難しい場合は坐薬もありますが、解熱薬として使う場合が多いです。点滴のアセトアミノフェンが発売されるまでは、術後の鎮痛薬として用いていました。
内服薬と比較して効果が出現するまでの時間が短いです。

ちょっと変わったところでは点滴で投与する方法があります。商品名はそれぞれアセトアミノフェンがアセリオ、ロキソプロフェンがロピオンといいます。
手術などで全身麻酔をした後など、絶食が必要な場合に主に用います。
内服薬と比較して効果が出るのが早いため、急いで痛みを止めたい場合などに使わないこともないですが、整形外科分野の痛みに対してはブロック注射のほうが確実かな?と思います。
なによりも内服薬と比較してお値段がかなり高いです。同じ成分量で比較した場合20倍から30倍もの値段の差がありますので、コストパフォーマンスは悪いです。
また、アセトアミノフェンの点滴であるアセリオには1000mgのアセトアミノフェンが含まれていますので、内服のアセトアミノフェンを合わせて過剰投与になりやすいので注意が必要です。

日本では医療機関で処方される痛み止めとしてはロキソプロフェンが一般的かと思います。私も痛み止めの第一選択としてロキソプロフェンを考え、ロキソプロフェンが禁忌(使ってはいけない)場合やロキソプロフェンが効きにくいタイプの痛みに対して他の薬剤を考える。ということが多いです。
しかし上記のように色々と副作用が多いお薬です。NSAIDs一般に言えることですが消化器症状、腎障害などもあり、漫然と使うものではないと思います。プレガバリンなどと違い、定期的に内服するのではなく、必要に応じて用いたほうがいいと思います。
NSAIDsも様々ありますが、ロキソプロフェンが日本でメジャーになった原因の一つは、日本の製薬会社が発売したからかもしれません。

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