痛み止めについて

錠剤

「痛み止めをください」


患者さんからよく言われます。多くの場合、関節や腰などの痛みがあってそれをどうにかしたいから来院されるわけなので、当然のことです。
でもちょっとまってください、痛み止めは本当に必要なのでしょうか?
まず、「痛み」とはなにか、考えてみましょう。

「痛み」は視覚や味覚などと同じ感覚の一種です


「痛み」の感覚のことを医学用語では「痛覚(つうかく)」といいます。
感覚を人間(というか生物)はなぜあるのでしょうか?それは人間が生きていく上で有利な外の情報を手に入れるためです。
美味しいご飯を食べるのは食べることにより栄養をとるためです。真っ暗な夜、明るい光があればそちらに向かっていくと思います。
味がわからない方が良い、目が見えない方がよいとは思わないですよね?
痛みも同じ感覚です。当然ですが不快な感覚ですので「痛みがでる動きをしないでください」と体が教えてくれているわけです。

痛み止めの役割はその感覚を鈍らせることです


例えば家が火事になって火災報知器が鳴っている時、火災報知器のベルだけを消して何もしなかったらどうなるでしょうか?
車のオイル警告ランプが付いていて、何もせずにそのまま車を走らせたらどうなるでしょうか?
これらのことが理解できるかたでしたら、次の時にどうすればいいかわかると思います。

洗濯物を干す時に肩が痛い
歩いていると膝が痛くなる
重たいものを持つと腰が痛くなる

答えは簡単ですね!それぞれ
洗濯物を干さない
むやみに歩かない
重たいものを持たない
となります。

そうはいっても、仕事をこなさなければなりません。
全ての仕事をこなすことはできないかもしれませんが、やり方をかえることによってできることもあるかもしれません。
どうやったら痛みがなく(洗濯物を干す、ものを持つ)などの目的を達成するかを学ぶことが大事です。

まずは痛み止めを使う前に


痛みが出ないようにするにはどうすべきかを考えましょう。痛み止めを使うのはそれからです。感覚の目的は、生きていく上で有利になるように生物に行動をうながすことです。何をすれば(しなければ)痛みが軽減するか?まず理解してください。痛みが生じる行動を回避しても痛い場合(例えば夜寝るときに痛くて眠れないなど)ときこそ痛み止めの出番です。

痛みの原因を解決していくには時間がかかる場合もあります


痛みの原因がはっきりしており、問題を解決するには時間がかかる場合は痛み止めを使っていきましょう。ただしずっと使っていると、色々と弊害が出てきます。痛み止めの種類にもよりますが、胃が荒れたり、体重が増えたりするものもあります。中には依存症になってしまい「痛み止めを飲まないと痛みが出てしまう」と薬物中毒のようになるお薬もあります(当院では処方していませんが、お薬手帳を拝見すると、そのような説明を受けずにずっと処方されている場合もあります)。痛みの原因をとる努力を続けていただき、なるべく早期に痛み止めを使うのを減らしていきたいです。

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